川田洋之助・杉野裕志 共著 マリン企画 「カラーガイド金魚のすべて」 2002年

書評
 総評としては、初心者からベテランまで金魚好きを
 飽きさせない内容で、限られたページ数にこれだけの
 情報を詰め込むのはなかなか出来ることではないと
 思つた。

 初心者を愛好家まで引き上げる良い教材だと感じる。

 随所に川田・杉野両氏のこだわりを感じ、大変嬉しい。
 表紙、これがグランドに朱を選択して上品な顔を
 演出している。さらに右上には宇野系のらんちゅうの
 写真を入れるあたりは憎い。

 「はじめに」の川田氏の文章はこの本の導入としては
 大変好ましいものと思われる。ここで一句と遊びもしっかり
 取り入れた部分はほほえましい限りである。

 らんちゅう紹介のページには、いきなりS氏の
 宇野系をバーンと載せるあたりは、思わず唸らされる。

 ジャンボオランダ、オオサカランチュウもしっかり解説している
 金魚本など皆無なので、これまた啓蒙に持って来いと感じる。 

 土佐錦の河辺氏、石川宗家など金魚界の頂点の紹介も
 忘れず、これまた憎い演出。

 叩き池の製作方法をここまで詳細に解説したものを見たことは
 ない。「金魚にはまるとここまで行っちゃうよ」という
 著者の声が聞こえてきそうだ。

 巻末の愛好会紹介に「琵琶湖金鱗会」が載っているではないか。
 いつか、会長が電話で「なんか出版社から電話で紹介したい
 が良いか、と言って来たがお前なんか知ってるか?」といぶかしげに
 言って来たのはこれだったのか。

 さらに、おお!巻末に参考文献がちゃんと書いてある。金魚本では
 こんなことは普通ありえない。種本やネットからの引き写しや盗用が
 横行する中、さらに参考文献の中に「らんちゅう至上主義」まで入って
 いたのには驚かされた!少しでもお力になれたかと思うと大変光栄である。

 この本はくだんのハウツー本ではない。金魚関連書籍の中で
 唯一「すべて」を網羅した本と言っても過言ではないであろう。
 まさしく「金魚のすべて」の名前に恥じない仕上がりとなっている。

 かの長澤先生の名著「金魚のすべて」の後継として、
 ふんだんに金魚の画像を挿入し、時代のニーズも取り入れ
 装いも新たに登場は、快挙というほかない。長澤先生も
 きっとお喜びであろう。

 最後に一つ、私からの苦言である。
 第二刷の時には、是非、帯を付けてほしい。
 裏表紙に申し訳なく書かれている
 「飼育から繁殖まで、金魚飼育の決定版」
 これをキャッチコピーとして前面に打ち出して、あまたの
 金魚本を蹴散らして欲しい!
 (NIFTYアクアリウムフォーラム専門館12番会議室より加筆訂正)